CASE
                        英進館株式会社
英進館株式会社様は、福岡を中心に九州・広島エリアへと展開している総合学習塾です。小学受験から高校・大学受験に至るまで、幅広い学年と受験形態に対応するコースを提供し、生徒それぞれの志望校合格を支援。医学部入試における一校舎あたりの最終合格者数では、毎年全国トップクラスの実績をあげています。
弊社トラコムが英進館様からお問い合わせをいただいたのは2023年1月のこと。三つ巴の競合コンペに勝ち、改めて過去の採用データを精査した結果、新卒採用におけるリファラル採用・アルムナイ採用のリソースを十分に活かせてないことが分かりました。
一般的にリファラル採用とは、社内の人脈を活かした採用手法のことで、アルムナイ採用とは、退職した従業員を再雇用する採用手法のことです。
英進館様におけるリファラル採用・アルムナイ採用の対象者は、英進館様で講師のアルバイトをしている大学生・大学院生や、アルバイト経験がある第二新卒者(一度は別の企業に新卒で入社した学生)を指します。
アルバイト先としては人気にも関わらず、就職先としてはなかなか考えてもらえない…、そう頭を悩ませている企業様は多いのではないでしょうか。あるいは、はじめからアルバイト採用と新卒採用を分けて考えている企業様もいらっしゃるでしょう。
まっさらな人材を採用するよりも、経験・理解があるアルバイトを正社員として雇用できれば、学生・企業お互いにとってメリットは大きいはずです。
そこで弊社は「新卒採用制度の構築」をご提案しました。さまざまな就職活動支援を通して、最終的に「さくらバッジ制度」を利用してもらい(詳細は次章で紹介)、学生アルバイトの就職先第一候補になる、同時に英進館様のアルバイト採用と新卒採用を地続きにする、そんな計画です。
準備・構築期として土台を固める1年目、本格的に運用を開始する成長期の2年目、定着期・習慣期の3年目、そして4年目以降もブラッシュアップとサポートを続けます。


本記事の執筆は2025年9月。まだ3年目ですが、ここまでの歩みについて英進館人事部のご担当者様と、弊社営業担当・北川に話を聞きました。
本プロジェクトは、既存の選択肢からのご提案ではなく、制度自体を一から企画・構築し、長きにわたり伴走するもの。そのため専属チームを発足しました。マネージャー、北川をはじめとするメンバー4名、デザイナー、進行管理(外部スタッフ)という盤石の体制です。北川はトラコム東京本社所属ですが、マネージャーとともに定期的に福岡の英進館様を訪問。オンラインとオフラインの両方でサポートを行っています。
ちなみに、上記プロジェクトの成果をより一層高めるために、オウンドメディア運用(SNS・採用ホームページ等)のコンサルティングも行っていますが、本記事では最も力を注いでいる「新卒採用制度の構築」に焦点を当てています。
英進館様では、小学・中学・高校時代に英進館様を利用していた生徒の多くが、大学・大学院在学中に講師アルバイトとして活躍しています。しかし、卒業後の就職先として選ばれるケースは多いと言えませんでした。アルバイト採用の延長線上に正社員採用がないため、正社員採用には毎年コストが掛かり、効率的な採用活動ができない状態が続いていたのです。
聞けば、以前からリファラル採用のような制度はあったそうですが、運用基準が曖昧だったこともあり社内での知名度は低く、ほとんど活用されていませんでした。
また一般的に、アルバイト先と就職先を分けて考える学生が多い傾向があります。就職先として検討してもらうためには、会社・仕事への愛着、いわゆる従業員エンゲージメントを高めることが必要です。
そのため、さまざまな就活支援の実施に加えて、英進館様への就職希望者を優遇する「さくらバッジ制度」の構築をご提案しました。
どんな就活支援を行ったかをご紹介する前に、新卒採用制度構築におけるゴールの1つ、「さくらバッジ制度」についてご説明します。
 取得するメリット
・正社員採用の最終面接への挑戦権を獲得
  ⇒ 大学卒業〜社会人3年目(院卒は1年目)まで有効
    卒業直後でなくても、正社員採用に挑戦可能
・新卒採用、中途採用の特別選考フローへ進める
・模擬面接・OB/OG座談会などの特典も利用可能
 ・キャリア面談も毎月実施(希望制)
  ⇒ 人事との1on1形式で、将来に向けた不安や進路の悩みに丁寧に対応
※詳細はこちらからご確認いただけます
2025年度さくらバッジ制度のご紹介
エンゲージメントを高めた先に、就職活動を優位に進められるこの制度を設けることで、就職先の第一候補として検討してもらえる確率はグッと上がります。バッジの有効期間が、社会人3年目まで適用される点も特徴です。
英進館様は、かねてより新卒採用のためのインターンシップや説明会の実施に積極的でした。加えて事業柄、どんなプログラムが学生に”ウケる”のかを深く理解しているという素地もありました。
北川は言います。
「せっかくノウハウがあるにも関わらず、これまでは学生アルバイトに向けてイベントを実施をしていませんでした。なので、英進館様に就職を希望している学生アルバイトは、ほかの学生と同じようにマイナビ・リクナビなどの新卒サイトから応募することが多かったようなのです。これはとてももったいない。
ですが逆に言えば、大きなチャンスでもあります。そこで人事の方々はもちろんのこと、OB・OGのみなさんにもご協力いただき、既存の就活支援プログラムをもとにさまざまなイベントを企画・提案・実施しました」
就活支援は、就職を目前に控えた大学3年~4年生や大学院生に非常に有効でした。しかし大学1~2年生の講師アルバイトの中には、教育業界への就職を検討しているものの、「就職活動はまだ先のこと」と考える人も少なくありません。そこで彼らには、日々のアルバイトに役立つ「集団授業研修」や「模擬授業」を実施し、エンゲージメント向上を促しました。
イベントの情報発信には、主にLINEを活用。既存のアルバイトにも登録を呼びかけ、新規のアルバイトには入社時に登録をしてもらうことにした結果、登録者数は着実に増加していきました。
とはいえ、はじめからすべてが順調に進んだわけではありません。たとえば日々の頑張りを労う食事会。参加費無料ということもあり多くの参加者を見込んでいたものの…
「食事会は福岡、大分、熊本の飲食店で開催しました。学生アルバイトに直接アプローチできる大きなチャンスです。飲み食いしながら、リラックスした雰囲気の中で就活支援やさくらバッジ制度を紹介する予定でした。
しかしフタを開けてみれば、参加率が良かったのは大分のみ。各エリア数十名のアルバイトが在籍しているにもかかわらず、福岡・熊本の参加率は奮いませんでした。アルバイトの採用面接以来、接点のなかった私たち人事部が急にアプローチをしたことで、警戒されてしまったのだと思います」とご担当者様は振り返ります。
日頃アルバイトがコミュニケーションをとるのは、勤務先の教室で講師を務める社員がほとんど。人事部とのやり取りはアルバイトの採用面接が最後という学生が多かったことが、期待したほど成果を得られなかった要因でした。
また、本格的な運用開始と位置付けた2年目の当初は、全教室で一斉に広報をすることでスピーディーな浸透を目指していましたが、講師陣は授業で多忙を極め、学生アルバイトにイベントや制度を紹介する時間はなかなか確保できませんでした。
LINEの登録者数も増えてはいたものの、情報を発信しても読み飛ばされてしまったり、イベントの申し込み方法が分からない学生アルバイトを取りこぼしてしまったりといった課題も。
ご担当者様と北川は、こうした状況を踏まえて作戦を変更しました。
「まず、食事会での制度の紹介はサラッと触れる程度にとどめることに。また役員の助言をもとに、開催場所を高級焼肉店に変更し、とにかく参加者に楽しんでもらう場にしました。
また、比較的余裕のある教室を人事自ら一つひとつ訪問して、社員に制度を説明し、アルバイトへの呼びかけの協力を要請。人事から学生アルバイトに直接アプローチするより、馴染みのある社員や、制度を知っているほかのアルバイトから紹介してもらった方が有効だと考えました」とご担当者様。
LINEでも、各種イベントやさくらバッジ制度の情報発信を増やしたほか、イベントの申し込みがしやすい仕様に変更。日常的に使ってもらえる身近なツールにすべく、随時アップデートを図りました。
各教室の訪問には、北川も来福時にできるだけ同行をしました。そこであることを閃きます。
「LINEなどの”オンライン”だけでなく、学生アルバイトの”リアルな生活動線”にも情報を得られる場所を設けたらどうかと考えました。具体的には、教室にイベントや制度を紹介する壁新聞を掲示します。学生アルバイトたちが一緒に壁新聞を見ながら『こんな制度があるんだね』 『一緒に参加してみない?』そんな会話が生まれれば良いなと」
壁新聞の作成は、「広報インターンシップ」という就活支援の一環として実施。参加者である学生アルバイトと北川、弊社デザイナーとの共同作業です。記事の内容は、イベントや制度の紹介、イベントの参加レポート、講師・学生の対談・インタビュー 等々。学生自ら企画・取材・執筆し、弊社のデザイナーが仕上げます。イベント・制度の認知度アップと就活支援を兼ねる新たな取り組みは、非常に好評です。

当初予定していたほどスピーディーな浸透とはいかなかったものの、少しずつですが着実に成果は現れています。
プロジェクト開始から3年目の現在、2年目と比較してLINEの登録者数は約1.8倍(966名)、イベント予約者数は約2.8倍(75名)、さくらバッジ取得者数約2.8倍(25名)と、軒並み増加。さくらバッジ制度の選考参加者のアンケートからも、確実に認知度が上がり、有意義な制度として機能し始めていることが窺えます。
▼ 選考参加理由に関するアンケート回答(一部)
「アルバイトを通して教育に関心をもった」
「自分がどれくらい活躍できそうかイメージするため」
「将来的な選択肢をできるだけ多くもっていたい。人事の方と話したかった」
「英進館の正社員になることが一つの選択肢であり、興味をもった。面接のフィードバックをもらえる貴重な機会だと思った」
「選択肢を広げるために参加。授業にやりがいを感じて楽しく働いている、加えて勤務先の社員の方が親切でこのような方々と一緒に働いてみたいと思った」
また、高級焼肉店で開催された食事会に関しても、「非常に満足した」「満足した」という回答が100%を占めました(2024年12月 福岡お食事会のアンケート結果)。このさき開催を予定している分の予約状況も上々です。
教室を一つひとつ訪問したり、食事会の内容を改善したり、“草の根”でやる大切さを実感しています。
塾講師という仕事は、一昔前は「教師になれなかった人の第二の選択肢」でした。私たちはそのイメージを覆し、学生たちの第一の選択肢へと成長したいと考えています。そのためにも今後は、最も就職活動に力を入れている大学3年生へのアプローチの強化が必要です。
はじめの3社コンペでトラコムさんを選んだのは、弊社の要望をただ聞き入れた提案ではなく、課題を分析したうえで納得できる提案をしてくれたから。今回の取り組みでは、北川さんを中心にチームで伴走してくださり、振り返り商談の際には必ず”次の一手”の提案がある点も信頼が置けます。もっともっと成果が出るように、今後も期待しています。
前述のとおり、本記事の執筆段階でプロジェクトは道半ば。北川はまだまだ意欲を燃やしています。
「これまでは1~4年生の学年別アプローチでしたが、所属大学別にアプローチするのも有効だと思います。やるべきこと・やりたいことはたくさんあります」
既存の選択肢に捉われない提案、ご担当者様にも評価していただいている「顧客理解力」と「提案力」を強みに、弊社はこれからもサポートを続けていきます。
そして、採用課題を抱えるまだ見ぬ企業様にも、同じように全力でサポートをする準備はできています。新卒採用に限らず、人材に関するお悩みがある企業様は、ぜひ弊社トラコムまでお気軽にお問い合わせください。
                                1979年の創業以来、九州を中心に“地域密着型”の学習支援を展開し、現在では福岡・熊本・佐賀・大分・長崎・宮崎・鹿児島・広島に多数の教場を構える総合進学塾。幅広い学年とニーズに対応する柔軟なカリキュラム体制に加え、教材開発やICTを活用した学習支援なども自社で一貫して手がけています。単なる学力向上や受験対策にとどまらず、「自ら学ぶ力」や「困難を乗り越える力」を育てる教育姿勢を大切にしており、地域の保護者・生徒から厚い信頼を集めています 。