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厚生労働省は令和3年(2021年)4月1日から、転職エージェントなどの職業紹介事業者による就職お祝い金の提供を原則禁止としています。さらに2025年の法改正では、職業紹介事業者だけでなく求人メディアを含む募集情報提供事業者にも規制が拡大されます。
本記事では、就職お祝い金の概要と、法改正に伴う企業への影響や対応策について詳しく解説します。人材確保のためのポイントもご紹介しますので、ぜひご参考ください。
就職お祝い金とは、一定の条件を満たした求職者が特定の企業に採用された際に、金銭や物品を支給する仕組みを指します。この制度は主に人材紹介会社や転職エージェントなどの職業紹介事業者が運営しており、求職者と企業双方にメリットを提供する目的で導入されました。
一般的には、採用された企業から職業紹介事業者へ支払われた手数料の一部が就職お祝い金として求職者に渡されます。目的としては、求職者にとっての転職活動のメリットを拡大し、企業に対して優秀な人材を迅速に紹介することが挙げられます。
就職お祝い金は、2000年代後半頃から人材紹介業界で普及しました。当時、多くの業者が顧客競争を激化させる中、他社との差別化を図るためのインセンティブとして採用されました。特に成長が著しかったIT分野や医療・介護業界では、転職需要が高まり、就職お祝い金が優秀な人材を素早く確保するための効果的な手段とされました。しかし、その一方で金銭的なインセンティブが転職動機に直結するケースが増え、短期的な雇用契約や頻繁な転職を促す要因ともなり、労働市場の不安定化が指摘されるようになりました。
就職お祝い金が求職者に与える影響としては、転職活動時の経済的な負担軽減や選択肢の拡大が挙げられます。一方で、目先の金銭的メリットを重視したためにキャリア形成の視点が薄れ、自分に適さない職場を選んでしまうというリスクも存在します。
企業側にとっては、採用コストの増加や短期間で離職されるリスクが課題となることが多いです。このような背景から、就職お祝い金制度は労働市場や雇用の安定にマイナスの影響を与えているとの指摘があり、後述する「就職お祝い金の原則禁止」へと至る経緯につながっています。
就職お祝い金の法改正の背景となった課題として、以下の3つが挙げられます。それぞれ詳しく解説します。
就職お祝い金の提供は、一時的な金銭的メリットを求職者に与える一方で、短期的な転職を促進する要因ともなっています。この制度は、求職者が金銭目当てで頻繁に転職を繰り返すケースを生み、結果として企業側は離職率の増加に苦しむという課題が浮き彫りになりました。医療や介護、保育業界など専門知識が重要視される分野では特に深刻で、熟練した人材が安定的に定着しない状況が続いていました。こうした背景が雇用環境の不安定化を引き起こしており、労働市場の健全性を損なう要因として問題視されています。
一部の人材紹介事業者や求人メディアが「就職お祝い金」という制度を導入することで、求職者を惹きつける競争が過熱していました。この結果、金銭的なインセンティブを提供する企業とそうでない企業の間に格差が生じ、採用活動全体の公正性が失われました。また、求職者も金銭基準での選択を重視しがちになり、自分に適した職場選びが二の次になるケースも増加。このような市場競争の歪みを防ぐため、法改正により「金銭等の提供禁止」が強化されることとなったのです。
就職お祝い金はシンプルな金銭提供として見れば魅力的な制度のように思えますが、倫理的・制度的な問題点が多く指摘されています。具体的には、金銭的引力が求職者の本質的なキャリア選択を阻害し、また企業が単純な採用成功の数値だけを追い求める傾向を助長する恐れがあります。また、就職お祝い金が頻繁な離職・再就職を促進することで、労働市場全体の安定を損ない、結果として長期的な経済成長にも悪影響を与える可能性が懸念されています。このような理由から、厚生労働省は厳格な指導のもと、この制度の禁止を推進しています。
厚生労働省は、就職お祝い金が抱える問題点を繰り返し指摘し、制度全体を見直す必要性を提唱してきました。令和3年(2021年)4月1日からは、職業安定法の改正により就職お祝い金の提供が原則禁止となりましたが、さらに2025年の法改正では、職業紹介事業者だけでなく求人メディアを含む募集情報提供事業者にも規制が拡大されます。この改正の目的は、労働市場の需給調整機能を保つことにより、不健全な転職誘導を防ぎ、求職者と企業双方の利益を守ることにあります。
就職お祝い金の禁止に伴い、求職者にとって転職活動の際に重視すべきポイントは変化していくでしょう。これまで「就職お祝い金」を一つの判断材料としていた場合、その場限りの金銭的メリットに注目するのではなく、より長期的な視野で転職を検討することが求められます。具体的には、企業の福利厚生、勤務環境、教育体制、昇給やキャリアパスの透明性といった中長期的なキャリアに価値を生む要素を見極めることが重要です。また、自身のキャリアプランに合った職場選びを心がけることが重要視されるようになるでしょう。
「就職お祝い金」の禁止に伴い、人材紹介事業者と求職者の関係性が大きく変化することが予想されます。これまで一部の人材紹介事業者は、求職者にお祝い金を提供することで転職を促していましたが、金銭的誘導が禁止されることで、事業者の役割は質の高いマッチングやキャリア支援に重きを置く方向へとシフトすることになります。求職者側においても、一時的な金銭的利益のためではなく、長期的なキャリア形成を重視した転職先の選定が必要とされるでしょう。この変化により、より信頼性の高いサービス提供が人材紹介業界全体に求められるようになります。
「就職お祝い金」を提供していた求人メディアや転職エージェントも、大きな影響を受けることになります。これまでは就職お祝い金を特典として提示し、求職者を呼び込む手法が広く用いられていましたが、2025年施行後はこうした手法が一切禁止されます。その結果、求職者へのアプローチ方法として、企業情報の充実化や差別化が求められるようになります。また、転職エージェント自身の信頼性や業界専門性を高める取り組みも加速すると考えられます。
企業側にとっても、「就職お祝い金」制度の廃止は採用活動の転換点となります。一部の企業では、転職市場での注目を集めるため、お祝い金を強調して求職者を引きつける方法が取られていました。しかし、このような短期的な手法が禁止となるため、企業は求職者に対して、職場環境や成長機会を魅力的にアピールする新しい施策を模索しなければなりません。具体例として、採用プロセスの透明性強化や入社後の研修制度の充実が挙げられます。採用ブランディングの重要性がさらに増す中で、優秀な人材を獲得するための戦略的な工夫が鍵となるでしょう。
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「就職お祝い金」が禁止となった後、企業の採用活動において重視されるのは、求職者に信頼される企業文化や具体的な人材育成方針です。たとえば、定着率が高い職場、働きやすい職場環境を積極的にアピールすることは他社との差別化になります。
また、従業員のキャリアアップやスキル向上を支援する具体的な取り組みの強化や、勤務開始後のフォロー体制を充実させることで、新しい職場にスムーズに適応できるようサポートする施策も注目されています。これらは、「長期的な成長を支援する企業」として求職者にうつり、就職・転職先の選択肢となる可能性が高いです。
こうした取り組みは、求職者に長期的なキャリア形成を意識させるだけでなく、企業側も持続的に雇用を維持することにもつながります。
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これまで就職お祝い金を強調して求職者を集めていた企業は、その代わりに採用活動の質を高める取り組みが必要になります。例えば、テクノロジーを活用したマッチング精度の向上や、人材採用におけるアドネットワークの活用が挙げられます。
アドネットワーク(Ad Network)とは、Webサイト・SNS・ブログなど、広告を配信できる複数の媒体を集結したネットワークのことです。アドネットワークを利用することで、複数の求人媒体の中から自社の採用ターゲットにマッチする最適な媒体へと自動的に広告を配信できるため、人材のマッチング率向上が期待できます。
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就職お祝い金の禁止に伴い、新たなインセンティブの形が注目されるようになるでしょう。例えば、リモートワークやフレックスタイム制の導入、福利厚生の充実など、金銭以外での価値提供が企業の採用活動において重要なポイントとなります。
また、「給与・福利厚生」などの待遇面は、従業員満足度(ES)に影響する大きな要素です。従業員満足度が高まることには、生産性・業績の向上や離職率の低下など、組織全体にもさまざまなメリットがあります。従業員満足度を維持・向上していくことは、企業活動に欠かせない活動のひとつといえるでしょう。
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就職お祝い金の禁止によって、雇用の不安定化を防ぎ、健全な労働市場への移行が期待されています。特に転職市場において、短期的に利益を得るための無計画な転職が減少し、より長期的な視点で就職や転職が選ばれるようになるでしょう。同時に、労働者の定着率向上を目的とした新しい施策の導入も進むと考えられます。
本記事でご紹介した「企業の対応策」を参考に、労働環境や従業員満足度を改善するための取り組みを検討してみてください。
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