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毎年夏から秋にかけての時期は、最低賃金の話題を目にすることが増えます。最低賃金が改定されると場合によっては給与の見直しが必要になり、人件費にも影響を与えることから、人材を雇う企業としては気になるニュースでしょう。
最低賃金は時間給で示されるため、「月給の場合はどのように計算すればよいのだろうか」と迷うことがあるかもしれません。当ページでは最低賃金の概要と、下回っていないかどうかの計算方法、よくある疑問について企業向けに解説します。
「最低賃金」とは、国によって定められている賃金の最低額のことです。日本では「最低賃金制度」により、従業員に対して最低賃金以上の給与を支払うことが義務づけられています。
もしも最低賃金に満たない金額しか支払っていない場合は、差額を支払わなくてはなりません。たとえ企業と従業員が「給与は最低賃金より低くても構わない」という内容で合意し、契約を交わしたとしても無効です。
最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。まずはそれぞれの違いを確認しておきましょう。
「地域別最低賃金」とは、都道府県ごとに定められた最低賃金のことです。一般的に「最低賃金」といえば、この地域別最低賃金のことを指します。
地域別最低賃金の金額が都道府県ごとに違う理由は、地域によって物価や賃金などが異なるためです。そのため、住宅費などが高額になりがちな都市部は高くなる傾向があります。例えば2024年の最低賃金は、最高額の東京都は1,163円、最低額の秋田県は951円です。
▶【2024年】最低賃金を解説!引き上げの時期や企業が対応すべきこと
「特定(産業別)最低賃金」とは、特定の産業だけが対象の最低賃金で、地域別最低賃金よりも高い最低賃金を定めることが必要と判断された産業に対して適用されるものです。
特定(産業別)最低賃金の額と、対象となる産業は、都道府県ごとに異なります。
自社の業種が特定(産業別)最低賃金の対象になっている場合、地域別最低賃金ではなく、こちらの最低賃金を基準にする必要があります。
最低賃金の対象となる人は、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」で異なります。
地域別最低賃金の対象者は、都道府県内にある事業場で働く全ての労働者とその使用者です。つまり正社員はもちろんのこと、契約社員や派遣社員、パート・アルバイトを含む全ての従業員が対象となります。
一方で特定(産業別)最低賃金は、特定地域内で特定産業の「基幹的労働に従事する人」と「その使用者」だけが対象です。以下のような人は対象外とされています。
最低賃金の対象となるのは、基本給や資格手当といった「毎月支払われる基本的な賃金」のみです。
反対に、最低賃金の対象とならない賃金の一例はこちらです。
出典:あなたの賃金を比較チェック|対象となる賃金は?|最低賃金制度
つまり「基本給だけでは最低賃金以下だが、時間外手当を含めれば最低賃金を超える」といった状態では、最低賃金をクリアしているとはいえません。最低賃金を計算する際は、支払った全ての賃金が対象となるわけではない点に注意が必要です。
従業員に支払っている給与が最低賃金を下回っていないかどうかを確認するには、まず勤務地がある都道府県の地域別最低賃金をチェックしましょう。特定(産業別)最低賃金の対象となる場合は、地域別最低賃金と比較して高いほうが基準となります。全国の地域別最低賃金は以下のページでご確認ください。
▶【2024年】最低賃金を解説!引き上げの時期や企業が対応すべきこと
ここでは、給与体系ごとの計算方法について解説します。
時間給の場合は特に計算は不要で、以下のように最低賃金と比較するだけです。
1時間ごとに発生する賃金が最低賃金の金額と同じか、あるいは上回っていれば問題ありません。最低賃金改定によって最低賃金を下回ってしまう場合は、賃金引き上げなどの対応が必要です。
日給制の場合は、「1日の所定労働時間」をもとに時間給を割り出します。下回っていないか確認する計算式は以下の通りです。
例えば日給が9,000円、1日の所定労働時間が8時間のときは、時給に換算すると1,125円です。
月給制の場合は、「月給」と「1ヶ月の平均所定労働時間」をもとに算出します。下回っていないか確認する計算式は以下の通りです。
「1ヶ月の平均所定労働時間」は、以下の式で導き出すことができます。
前述の通り、計算に使う賃金には通勤手当や時間外手当、ボーナスなどを含めることができません。総支給額で計算できるわけではないため注意が必要です。計算例はこちら。
出来高払制や請負制の場合は、賃金の総額を総労働時間で割って計算します。総労働時間には、時間外労働(残業)も含まれます。
・賃金の総額÷総労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
出来高払というと、「成績しだいでは給与がゼロになっても仕方ないので、最低賃金は当てはまらない」というイメージがあるかもしれませんが、それは誤りです。最低賃金は、出来高制で働く人にも適用されます。
ここでは、多くの企業で採用されている「月給制」で、最低賃金を下回っていないか確認する計算例をご紹介します。以下のケースでは、最低賃金がいくらになるのかを計算してみましょう。
<給与の内訳>
<労働時間>
「総支給額」のうち「時間外手当」と「通勤手当」は対象外なので、最低賃金の対象となる賃金額は以下のようになります。
1ヶ月の平均所定労働時間は以下の通りです。
以上の数字を「月給÷1ヶ月平均所定労働時間」の式に当てはめると、時給換算した賃金は以下のようになります。
計算結果の「1,139.8円」が、人材を雇用する都道府県の最低賃金額(時間額)より下回っていないかを比較することで、自社の月給が最低賃金の基準を満たしているか確認できます。
最低賃金の引き上げによって、賃金を上げなくてはならないケースがあります。具体的な金額を決める際は、賃金が現場のシフト調整や採用などにも影響を与える可能性を考慮しましょう。賃上げを行うときに、どのようなポイントに注目すればよいのかを解説します。
従業員に支払う賃金は、最低賃金だけを満たしていればよいというわけではありません。事業所のあるエリアや業種によっては、最低賃金よりも高い金額を設定しなければならないケースもあります。周辺にある同業他社の動向にも目を向け、適切な賃金を決めましょう。
他社と比較して賃金が見劣りすると、離職する人が増えたり、求人を出しても応募が来なかったりと、さまざまな弊害が出てきます。賃上げを渋った影響で人手不足が進み、採用コストが増加する可能性もゼロではありません。
賃上げをする前に業種やエリアごとの平均時給を調べるなどして、他社の動向を確認しておきましょう。業種やエリアごとの平均時給のデータは、こちらの記事でご紹介しています。
短時間のパートやアルバイトなど、自身では社会保険に加入せずに扶養の範囲内で勤務している人の場合、賃上げによって働き方そのものに影響が出ることがあります。これは、賃上げによって社会保険への加入義務が発生する可能性があるためです。
2024年10月に社会保険の適用範囲が拡大されたことで、所定内賃金が月額8.8万円を超えた場合に、社会保険の対象となる可能性が出てきました。もしも扶養の範囲内で収めたいのであれば、月収が8.8万円を超えないように、労働時間を減らさなくてはなりません。
しかし、会社側の都合だけで労働時間に制限を設ければ、従業員のモチベーション低下や離職の原因となってしまいます。従業員本人の意思も確認した上で、社会保険への加入を望む場合は、所定の手続きを行いましょう。
パート・アルバイトの社会保険について詳しくは、こちらの記事で解説しています。
▶ 2024年10月社会保険が適用拡大!アルバイト・パート「106万円の壁」への対策
賃上げに伴う人件費増加をカバーするために、業務を効率化して、無駄なコスト・人件費を減らせる部分がないか検討することも重要です。
例えば製造業であれば、古い設備を更新して、生産効率が高い最新設備を導入してもよいでしょう。オペレーターの代わりにチャットボットを導入するなど、業務の一部を自動化するのもよい方法です。時間外労働が多い職場では、業務効率化によって時間外労働を削減するだけでも、大きなコストカットになります。
業務量が測りにくいバックオフィスの場合も、昨今では効率アップのためのさまざまなツールやサービスが登場しています。例えば、膨大な事務作業が必要な「採用業務」を効率化するには、人事向けの業務効率化サービスを導入するのがおすすめです。
採用業務の効率化を実現する方法やサービスについては、こちらのページをご覧ください。
賃上げによる人件費の増加をカバーするには、採用コストを最適化することも検討しましょう。人手不足が進む昨今では、採用にかかるコストも無視できないものとなっています。加えて、他社も賃上げをすれば、人材獲得の競争が厳しくなることが予想され、人件費と採用コストとの両方が経営を圧迫することになりかねません。
できるだけ採用コストを抑えつつ、自社に合った人材を採用していくには、効率的な採用手法を取り入れることが大切です。従来の求人サイトを使った採用だけに頼るのではなく、「ダイレクトリクルーティング」や「リファラル採用」など、最新の手法も取り入れることを検討しましょう。
最新の採用手法について詳しくは、こちらのページをご参照ください。
▶ 新卒採用・中途採用のトレンドとは?多様化する採用手法13選を徹底解説
ここでは、最低賃金に関するよくある疑問と回答を紹介します。最低賃金制度を正しく理解し、法律に違反することがないように務めましょう。
従業員に支払っている給与が最低賃金に満たない場合は、差額を支払う必要があります。
さらに罰則もあり、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には50万円以下、特定(産業別)最低賃金以上の賃金額を支払わない場合には30万円以下の罰金が定められています。
特に注意したいのが、最低賃金の改定によって、意図せず最低賃金を下回ってしまう可能性があることです。改定後の新しい最低賃金は、雇い入れた時期にかかわらず、全ての従業員に適用されます。そのため改定前に雇用した人の給与も、最低賃金の改定に合わせて調整する必要があります。
毎年の改定を必ずチェックし、必要に応じて賃上げを実施しましょう。
最低賃金は毎年10月頃に改定されます。2024年も10月に改定が予定されています。実際に適用がスタートするのは、効力発生日(発効日)からです。具体的な効力発生日は各都道府県によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
2024年の最低賃金については、こちらのページで詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
▶【2024年】最低賃金を解説!引き上げの時期や企業が対応すべきこと
研修期間中や試用期間中であっても、最低賃金の対象となります。これは、正社員や契約社員やパート・アルバイトなど、いずれの雇用形態にも適用されるルールです。研修期間中は通常よりも賃金を下げる場合や、研修期間中に最低賃金の改定がある場合は、十分に注意しておきましょう。
その一方で、特定(産業別)最低賃金については、研修期間中に限り対象外になるケースがあります。ただしその場合も、地域別最低賃金の対象となるため、違反することがないよう留意しましょう。
最低賃金とは、従業員に支払うべき賃金の最低額です。最低賃金は時間額で示されるため、日給制や月給制の場合は、時間給に換算して下回っていないか確認する必要があります。最低賃金の対象となる賃金は、基本給と毎月支払われる手当のみであり、通勤手当や時間外手当などは含めることができません。最低賃金をクリアしているか確認する際は十分に注意しましょう。
最低賃金が引き上げられたときは、それに従って従業員の給与も見直さなくてはなりません。人件費増加に伴う採用業務のコストカットの方法をご検討の際は、ぜひトラコムにご相談ください。弊社トラコムでは、業務効率化に役立つツールやサービスの選定をはじめ、採用業務に関するさまざまなサポートをご提供しています。「最新の採用方法を取り入れたい」「採用業務を根本から見直したい」など、採用にまつわるお悩みなら何でもお気軽にお問い合わせください。
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